
第1回 キジ
五枚橋: 合田さん、ウロ子ちゃんの「国鳥の巻」読みました? 冒頭いきなりの、キジが「ドバババッ!」って茂みから飛び出してくるシーン、あれ本当に「キジあるある」ですよね。
合田: 本当にそうですね。私も調査や散歩中に何度も経験がありますが、あの爆音と瞬発力には毎回心臓が止まりそうになります。
五枚橋: あんなに勢いよく飛び出してこなければ、メスだったら漫画で描かれていたような茶色の保護色なので、全く気づかないまま通り過ぎているはずなんですけどね(笑)。 実はあの短くて太い翼は、狭い場所からでもロケットのように急上昇できる「緊急離陸」に特化した形をしているんですよ。
合田: なるほど、まさに地上戦のスペシャリストですね。でも、そんなに身近で「昔話の主役級」のキジですが、実は「日本固有種」だと正式に認められたのはつい最近のことだって知っていましたか?
五枚橋: え、そうなんですか? 昔から日本の鳥の代表だと思っていました。
合田: 1947年(昭和22年)に鳥学会が選定した国鳥ではあるんだけれど・・・
五枚橋: おっ、選定したのは鳥学会でしたか。
合田: そう。「桃太郎」に登場する馴染み深さなど、漫画に描かれた様々な理由で国鳥に選ばれたんだけれど、キジは長い間、コウライキジの亜種であるという見解が一般的だったんだ。コウライキジは、ユーラシア大陸に広く分布しているよね。
五枚橋: ええ。国内で狩猟を目的として放された時代があって、今も北海道や沖縄に分布していますね。首の模様などが少し違いますよね。そうか。2024年発行の「日本鳥類目録 改訂第8版」で独立種として扱われ、正式に日本固有の鳥といえるようになったわけですね。 誌面の解説ではオスのことを「派手自慢のイケメン」なんて呼んでいましたが、あの派手な見た目も進化の選択なんですよね?
合田: そうですね。オスは光沢のある緑色の体に真っ赤な**「肉垂(にくすい)」、そして立派な長い尾羽を持っています。 この尾羽、実は飛ぶときにはブレーキになってしまうという欠点があるんです。キジは空を自由に飛ぶことよりも、「オシャレ度」を上げて、メスにモテる道を選んだんです。
五枚橋: まさに「ファッション路線」ですね(笑)。 でも、そんなにお洒落に気合を入れているのに、子育ては100%メス任せなんですよね。
合田: ええ。オスは「ケーン」と鳴いて羽音を立てる「母衣(ほろ)打ち」で自分の縄張りとイケメンぶりをアピールするのに忙しくて、育児には一切参加しません。 その分、メスが地味な茶色の羽で周囲に溶け込み、命がけで卵や雛を守るんです。
五枚橋: 強いお母さんですね。あ、そういえばキジといえば地震を察知するという話も有名ですよね。
合田: そうだね。「オーソライズされた定説」とは言えないかもしれないけれど、キジの足の裏には特殊な細胞があって、人間には感じられないほど微かな大地の震えに反応するという説があるらしいね。
五枚橋: 伝説からごく最近の分類変更、不思議な能力の可能性と、キジは深掘りすると面白い要素がたくさんあるんですよ。それらももう少し詰め込みながら、キジの世界をおさらいしてみましょう!
本日のまとめ 国鳥キジ – その驚きの生態と進化のカタチ –
和名:キジ 英名:Green Pheasant 学名:Phasianus versicolor
日本鳥学会によって選定された日本の「国鳥」。岩手県、岡山県の「県の鳥」にも選定されています。岡山については、さすが桃太郎の県!
本州から九州の野山に一年中、留鳥としてくらしています。一方、北海道や沖縄で見かけるコウライキジは、もともと狩猟目的で放鳥された外来系統のコウライキジが野生化したものです。長らくキジはこのコウライキジと亜種の関係であるとされてきましたが、2024年の「日本鳥類目録 改訂第8版」において独立種として扱われるようになり、日本固有種となりました。ちなみにIOC World Bird List等、海外の目録ではもう少し前から独立種として扱われています。また、キジは地域ごとにさらに細かく、トウカイキジ、キジ、シマキジ、キュウシュウキジの4つの亜種に区分されます。
キジの最も大きな特徴は、オスとメスで姿が大きく異なる「性的二型」にあります。オスは光沢のある緑色の体に、顔周りの真っ赤な「肉垂(にくすい:顔の周りの羽毛の生えていない皮膚)」、そしてメスへのアピールポイントとなる立派な長い尾羽を持っています。足には「蹴爪(けづめ)」と呼ばれる突起物があり、特にオスではこれが大きく発達します。この蹴爪は主に縄張り争いの際の武器として使われます。身近な家禽であるニワトリもキジの仲間(キジ科)で、肉垂や蹴爪といった特徴が共通してみられます。対するメスは、卵を温める際に敵に見つからないよう、周囲の景色に溶け込む茶褐色の「保護色(忍者の術)」を身にまとっています。
飛び方も独特です。キジの太く短い翼は、狭い場所からでも一気に飛び出せる「緊急離陸(ロケットスタート)」に特化した形をしています。散歩中に茂みから突如「ドバババッ!」と飛び出してくるのは、この瞬発力があるからこそです。一方で、オシャレを競うオスの長い尾羽は飛行時のブレーキになってしまうため、長距離を自由に飛び回るよりは、地面を歩く「地上戦」のスペシャリストとしての生き方を選ぶことになりました。
繁殖期になると、オスは「ケンケン」という鋭い鳴き声とともに、両翼を激しく羽ばたかせて「ドドドッ」と音を鳴らす「母衣(ほろ)打ち」を行い、縄張りや自身の強さを誇示します。キジは一夫多妻や乱婚という奔放な繁殖形態をとります。地上に枯れ葉を集めて巣を作り、春から初夏にかけて6個から12個ほどの卵を産みます。卵からかえった雛は、すぐに自分の足で歩き出すことができる「早成性(そうせいせい)」を持っており、親とともに速やかに巣を離れます。地上に作られた巣での抱卵や子育てのすべてはメスが担い、オスが育児に参加することはありません。
「キジは地震をいち早く察知する」「キジが鳴き続けると地震が来る」という言い伝えがあります。キジの足の裏にある特殊な感覚細胞が地震の初期微動を感知し、地震をいち早く察知するという説も唱えられているそうで、興味は尽きません。美しい見た目やユニークな特徴も含めて非常に示唆に富む存在といえるでしょう。
(今回のちいかん先生は東北支社の合田(ごうだ)と五枚橋(ごまいばし)でした)
教えてちいかん先生はこれからも、
びっくり 目からウロ子ちゃんを楽しんでいただいた方へ
さらに目からウロコ増し増しなトピックをお届けします。
次回の更新もどうぞお楽しみに。またお会いしましょう!