ちいかんコラム

2019
01.18

海岸きずなプロジェクト「里浜の再生にむけて」
~地域で守り・育て・使う海辺を目指して~

東北支社 自然環境研究室 千布 拓夫

東北支社 自然環境研究室
千布 拓夫

皆さんこんにちは。東北支社の千布拓生です。
ちいかんコラムをご覧頂き、ありがとうございます。

今回は、私が参加している「海岸きずなプロジェクト」(主催:北の里浜 花のかけはしネットワーク)についてご紹介します。


海岸きずなプロジェクトとは

3.11東日本大震災。あの日防波堤は崩れ、海岸林は倒されました。しかし海浜植物は、たくましく花を咲かせ群落を広げていたのです。しかし、一般的に認知度が低く保護の対象になりにくい海浜植物は、復旧工事による造成・盛土により、再びその生命が失われようとしていました。

力強く生き、私たちを癒してくれる海浜植物を守りたい。そんな思いの仲間達が海浜植物の種子を集め、北海道と東北で苗づくりや植生など、海浜再生にむけたプロジェクト(海岸きずなプロジェクト)として「北の里浜 花のかけはしネットワーク(はまひるがおネット)、代表 鈴木玲さん」が立ち上がりました。

 ※北の里浜 花のかけはしネットワーク
  https://ja-jp.facebook.com/hamahirugao

 ※はまひるがおネット
  https://twitter.com/kakehashipjt

プロジェクトの目的
津波被害を受けた海浜の植生回復のための活動を通し、一般市民やさまざまな団体が新しい仲間を作り、海辺の自然や文化を守り育て、新たな利用価値を模索し、持続的に利用していくこと、防災や減災を学び次世代につないでいくことを目的としています。
盛土したクロマツ植栽地
盛土したクロマツ植栽地
海岸きずなプロジェクトⅣ 里浜の再生にむけて~地域で守り・育て・使う海辺を目指して~

2014年6月に第1回を開催して以降、4回目となる前回のイベントは、2018年6月9,10日の2日間、宮城県仙台市において開催いたしました。

岩手県釜石市から宮城県仙台市まで、東日本大震災で被災した沿岸域で活動する6団体や一般市民にたくさんご参加いただき、復興の進む里浜を地域で守り・育て・使うためのミニシンポジウム及び海岸植生視察などを行いました。

6/9:ミニシンポジウム
地元の里浜の生活や環境を復興していくための様々な活動について、さまざまな団体から報告がありました。

私もその1人として登壇し、当社が仙台市新浜・荒浜の海浜植物の植栽活動において2016-2017年に植栽したハマヒルガオ(浜昼顔)・ハマニガナ(浜苦菜)・ウンラン(海蘭)ケカモノハシ(毛鴨嘴)・コウボウシバ(弘法芝)・ハマボウフウ(浜防風)・コウボウムギ(弘法麦)について、現在の生育状況結果を発表しました。

・ハマヒルガオの2016年植栽の株7%、2017年植栽の株13%生存。
・他の種の2016年植栽の株40~80%、2017年植栽の株ほぼ100%生存。

比較すると、ハマヒルガオの生存率が最も低いという結果になりました。

6/9:グループディスカッション
6団体からの報告後は、里浜の生活や環境の復興を加速していくためには何が必要か、参加者を交えたグループディスカッションを40分程度行いました。
・行政にばかり頼らず、市民からの草の根の活動を通じて逆に行政を動かしたい。
・今後も様々な団体や市民と連携しながら多くの市民参加を促していきたい。
・海で活動する人が震災前の水準には戻っていない。定期的にイベント等を開いて住民参加の機会を多く設けたい。
などなど、非常に短い時間ではありましたが、復興に対する皆さんの思いや希望について活発な議論がなされ、これまでつながりの無かった団体や住民同士の連携の可能性が感じられました。
6/10:海岸植生視察

はまひるがおネットの副代表である北海道大学の松島肇先生と共に、植生のガイドとして参加しました。海岸で見られる代表的な海浜生態系や植物を解説し、防潮堤の内陸側にある2017年の植栽地と、防潮堤より海側の自然海岸を見学して回りました。

植栽地見学では参加者の皆さんと一緒にモニタリングをしました。驚くべきことに、2017年の調査では、夏の熱さや植栽直後のストレスにより8割ほど枯れたと思っていたハマヒルガオのほとんどが復活。枯れたのは地上部のみで、地下で根が生きていたようです。

自然海岸に向かう前に防潮堤に上ったのですが、海側は砂が表面に堆積するとともに海浜植物が生育し始めているのが目立ちました。建設当初は批判もあった防潮堤ですが、このまま全体が砂に覆われて海浜植物が茂るようになれば、砂丘のようになるかもしれません。今後の変化に注目していきたいと思います。

自然海岸ではゴミ拾いをしつつ、海浜植物群落を見学し、仙台湾近郊で見られるまとまったハマナスの生育地であることや、津波を乗り越えて生き残ったことなど、思わぬ学習があり、考え深いものがありました。

防潮堤表面にも海浜植物が生育
防潮堤表面にも海浜植物が生育
今後の活動について

当社は今後も、植栽した植物のモニタリングを継続するなど、「北の里浜 花のかけはしネットワーク」の活動をご支援してまいります。また、その他の団体や市民の方々とも、様々な活動に柔軟に連携させていただきたいと考えております。

市民のみなさんが思い描く理想的な里浜の文化や自然環境を復興させる未来、私たちと一緒に実現させませんか。



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