ちいかんコラム

2016
12.02

私たちをつなぐ“森”のチカラ
~地球×地域社会×人~

大阪支社生物多様性推進室<br />

大阪支社 生物多様性推進室
千々岩 哲 (ちぢいわ あきら)

休日は森へ。
そこには様々な生きものが暮らしています。
森で暮らす生きものの姿は、
私たちに、生きることを教えてくれます。
また、四季折々の変化は、
自然への興味だけでなく、和みや癒やし、
恵みと畏れを感じさせ、私たちの文化を形作ってきました。
しかし、森が私たちに与えてくれるものは、
それだけではありません。
出会いや育ち、そして雇用さえも。
農山村との関わりを深める中で、
私は、見過ごしていた森と木々の姿を知りました。

 

どんな所に暮らしていても、人は森の恩恵を受けています。
よく知られたことでは、
植物たちが地球上に多くの酸素をもたらしたこと。
そのことが生きものたちの急速な進化につながりました。
とりわけ恩恵を受けたのは動物たちでしょう。
その理由である生物学の話はおいといて、
故に私たちはここにいます。
そればかりではありません。
森は雲を生み、雨をもたらします。
そして、山の恵みを私たちに約束してくれます。
また、気候を穏やかにもしてくれています。

 

私たちが様々な恩恵を受けている「森」。

私たちが様々な恩恵を受けている「森」。

 

忘れてならないのが木のこと。
木材(木質バイオマス)という大地からの恵みは、
地球温暖化による災害が起きている今、
海洋の二酸化炭素吸収の次に大事な自然の調整機能です。
(ちなみに海洋のCO2吸収は限界が近づいているようで、
海水の酸性化により、多くのサンゴが死滅しています)
木々たちが炭素を身体に蓄えることで、
私たちが壊した大気のバランスが修復されています。
その蓄えられた炭素は、
私たちの暮らしを支える家やエネルギーにもなるのです。

 

災害が起こった時、電気やガスが無くても薪さえあれば、
暖がとれ、調理ができます。
森の水源涵養は飲料水を供給してくれます。
季節にもよりますが、食べ物だって得られるのです。
この、暮らしを支えるしなやかな力は
“グリーンレジリエンス Green Resilience”(※1)と称され、
その価値が再認識され始めています。
(※1 自然を活かした災害に強い暮らし、地域社会)

 

薪-森が育む大地の恵み。

森のチカラがもたらす大地の恵み「薪」。

 

暮らしを支えてくれる森は、それだけではないのです。
森のレジリエンスは、人をつなぎ、新しい雇用も与えてくれます。
今おつきあいのある、ある地域では、その人のペースで仕事ができる薪割りを
生きる力をつける機会に活かし、雇用につなげています。
人と接することが苦手な人、トラウマを持つ人、
何らかのハンディキャップを持つ人、
そんな人々が働く場を生み出しているのです。
里山管理が木材を育み、その木材から薪が生み出されます。
薪は薪ストーブ購入者・利用者をつなげ、
利用先の福祉施設やレストランでは、人々を温め、集う場所を賑やかにします。
人々の優しさに溢れたコミュニティを強固なものにする木の力。
それは、何気ない暮らしを通して“生きるしなやかさ”を与えてくれます。

 

針葉樹も燃やせるストーブ。地域で生産することで雇用を生んでいる。

針葉樹も燃やせるストーブ。地域で生産し、雇用を生んでいる。

 

あなたの身の周りにある森。
それは、なにげに暮らしていても
私たちを地球規模でつなぎ、
身近な人々や地域社会とつながる機会を用意してくれています。
それを活かすか逃すかは、あなた次第です。

 

これだけは忘れないで下さい。
森は私たちの“ゆりかご”であるということ。
いつも守ってくれる。
そういう存在なのです。

 



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