ちいかんコラム

2015
09.30

かんたん、お手軽、低価格「エコツアー生きもの入門編」
~おひとりさまからお子さん連れまで~

東北支社自然環境研究室 伊藤 美穂子

東北支社自然環境研究室
伊藤 美穂子

はじめまして。
東北支社自然環境研究室の伊藤美穂子です。
仙台市在住・40歳・女性・植物技術者です。
今回は、私の休日をご紹介しつつ、生きもの技術者の目線でみなさんにエコツアー(生きもの編)をおすすめしてみたいと思います。

ホエールウォッチング、トレッキングツアー、カヌー、農林漁業体験など、お金を払って参加するものばかりがエコツアーではありません。ここでは、ひとりでも、お子さん連れでも、短時間で行けるエコツアーの例をご紹介します。

近所を歩いて生きものを探す(所要時間30分~)

歩いて行ける公園や川など身近なところにも生きものはいます。
見慣れた生きものが多いかもしれませんが、季節によってみられるものが違いますので、新しい発見、楽しみがきっとみつかるはずです。
私の場合、外を歩く時は大抵カメラを持って行きます。今は鳥の写真を撮りためることにハマっていて、「初めてカケスが撮れた」とか「シジュウカラの自己ベスト更新」などと言って喜んでいます。
たとえばこのような活動がちょっとした時間で可能です。

・ バードウォッチング
・ チョウやオタマジャクシを捕まえる
・ 咲いている花の写真を撮る
・ 植物を押し葉標本にして名前を調べる
・ 観察記録、写真をブログなどで公開する

近所の公園の池でオシドリとカルガモ、道端に咲くオオイヌノフグリ

近所の公園の池でオシドリとカルガモ      道端に咲くオオイヌノフグリ   .

 

少し足を伸ばして、特定の環境にいるものを特定の時期にねらう(所要時間3時間~)

日常の生活圏ではみられないけれど、車やバス、電車を使って少し足を伸ばせばみられるものを見に行きます。
ここでは少々下調べが必要になります。
生きものにはそれぞれに得意な環境があります。みたい生きものが決まっているなら、その生態を調べてみられそうな場所を予想したり、Web検索や詳しい人に聞いたりして具体的な分布情報を探します。生物季節を外さないことも重要です。
特にみたいものが決まっていなければ、地域の観光資源になっている登山道や湿原、海といった生きものの観察スポットの情報を調べて、ふだんはあまり行かないような環境を選んで出かけてみます。
私は職業柄、野外にいることが多いのですが、仕事やその移動で通過する環境には、やはり偏りがあります。ふだん行かない環境を選んで出かけると、まだまだたくさんの初めてみる生きものに出会うことができます。
たとえば、このようなところに出かけてみてはどうでしょう。

・ 湿原に咲く花をみる
・ サケの遡上をみる
・ みたことのないトンボをみる
・ 潮干狩りをしながら貝やカニをみる
・ 干潟で渡り鳥をみる

仙台市近郊の蒲生干潟、秋の干潟でツルシギ

仙台市近郊の蒲生干潟            秋の干潟でツルシギ

 

もっと遠くへ行ったら、その土地ならではの生きものをみる(所要時間3日~)

せっかく遠くへ旅行に行ったら、ぜひ、時間をとってその土地の生きものをみてみましょう。
南北に長い日本では、みられる生物相ががらりと変わるライン(生物分布境界線)がいくつかあります。また、そこにしかいない固有種がみられる場合もあります。
手順は前述の「少し足を伸ばして特定の環境にいるものを特定の時期にねらう」と同様に、まず事前に情報収集が必要です。加えて、現地の空港に着いたら地図や観光情報、エコツアーのパンフレットなどをチェックし、使えそうなものをいただいておきます。また、ビジターセンターや、自然系の博物館に行って学習するのもいいですね。
私の場合は北海道、東北の低地~低山を中心に植物を覚えたので、たとえば沖縄に行くと、ほとんどの植物がわからない、という状況に陥ります。ですので、沖縄の植物をコンパクトにまとめた図鑑を現地の書店で購入してから野山に行きます。
まあ、ここまでしなくても、移動中に車から景色を眺め、気に入ったところで少し車を停めて歩いてみるだけで、全然違う自然を楽しめると思います。
たとえば、このようなこと。

・ 北海道でナキウサギ、タンチョウ、ラッコをみる
・ 北アルプスや南アルプスの高山でライチョウ、高山植物をみる
・ 奄美大島でアマミノクロウサギをみる
・ 沖縄のヤンバルクイナ、ノグチゲラをみる

奄美大島でアマミノクロウサギ、喜界島固有種 ヒメタツナミソウ

奄美大島でアマミノクロウサギ       喜界島固有種 ヒメタツナミソウ

沖縄でヤンバルクイナ(写真撮れず残念)、南西諸島に普通な木性シダ ヒカゲヘゴ

沖縄でヤンバルクイナ(写真撮れず残念)   南西諸島に普通な木性シダ ヒカゲヘゴ

なお、希少な生きものの生息地に限ったことではありませんが、自然の中に分け入る時には生きものの棲む環境をなるべく荒らさず、適度な距離を保ってそっと観察しましょう。

以上、距離と時間に応じて自力でかんたんに計画できるエコツアーをご紹介しました。

その地域の自然をよく知るガイドさんに話を聞いたり、自然観察会に参加したりするのにもそれぞれの良さがありますが、ちょっとした空き時間にひとりで、あるいは小さいお子さん連れでも気軽にできる、自力エコツアーにもチャレンジしてみてはいかがでしょうか。



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