ちいかんコラム

2015
04.17

第24回フジサンケイ地球環境大賞特別賞を受賞
動物専用の橋「アニマルパスウェイ」で樹上性野生生物を保全

東京支社生物多様性推進室園田陽一

東京支社 生物多様性推進室
園田 陽一

みなさん こんにちは。
東京支社 生物多様性推進室 園田 陽一です。
今回は、私が個人会員として所属しているアニマルパスウェイ研究会について紹介します。
最初に、このたび、この会の取組みが、産業の発展と地球環境との共生を目指し、温暖化の防止や環境保全活動に取り組む企業や団体を表彰する「2015年度第24回フジサンケイ地球環境大賞特別賞」を受賞し、光栄なことにレセプションにも参加させていただきましたのでその時の様子から。
※地球環境大賞公式WEBサイト 授賞式
http://www.fbi-award.jp/eco/news/150409index.html

 

明治記念館

明治記念館

レセプションは明治記念館で、秋篠宮・同妃両殿下の同席のもと開催されました。受賞者はそうそうたるメンバーで、トヨタの「MIRAI」をはじめ、東レの砂漠の緑化や山陽女子中学校・高等学校地歴部の海底ごみ問題、日本航空の航空機による大気観測等、壮大なテーマで受賞されていました。アニマルパスウェイ研究会の皆で秋篠宮殿下に接見させていただいた際には、湊会長、大竹代表幹事からアニマルパスウェイやヤマネの説明をさせていただきました。

地球環境大賞看板

地球環境大賞看板

アニマルパスウェイ研究会は2013年度にも日経地球環境技術賞優秀賞を受賞するなど、発足して10年を経てますます社会的な認知度、プレゼンスが高まっている研究会なのです。 

 

アニマルパスウェイ研究会メンバーにて集合写真

アニマルパスウェイ研究会メンバーにて集合写真
(湊会長、大竹代表幹事を中心に)
著者は中列、向かって左から4番目

 

さて、ここからはアニマルパスウェイ研究会とはどのような会で何をしているのかを紹介します。

高速道路で交通事故にあうタヌキの数はなんと年間11万~30万頭

皆さんは、動物専用の橋があるのをご存知ですか?
道路により森林が分断されると野生動物にとってどのようなことが起きるでしょうか。ひとつは、野生動物が道路に飛び出してきて交通事故にあうといったロードキル、道路を忌避することによって本来の行動圏を移動しなくなるバリアー効果など様々な影響をもたらすことが知られています。日本の高速道路では、年間11万~30万頭ものタヌキが交通事故にあっています。また、樹上性哺乳類にとっては、木の上を移動することが、捕食者から回避するといった重要な意味を持つので、森のつながりは非常に重要なのです。

最初は天然記念物ヤマネの横断施設から

「アニマルパスウェイ研究会」は、財団法人キープ協会やまねミュージアム、ニホンヤマネ保護研究グループと清水建設、大成建設により「アニマルパスウェイ研究会」として、2004年に発足しました。
特に、天然記念物であるヤマネの移動に配慮した横断施設として、有料道路に案内表示を兼ねた施設を開発し、設置しました。
※アニマルパスウェイ研究会WEBサイト
http://www.animal-pathway.jp/

ホンモノソックリ? ヤマネ
ホンモノソックリ? ヤマネ
(やまね工房)
小さく愛くるしい見た目で人気のニホンヤマネ(体長約8cm・体重約18g)は、夜行性の哺乳類です。本州・四国・九州にのみ分布する一属一種の日本固有種で、国の天然記念物に指定されています。森の木の上を生活圏にしています。
※公益財団法人キープ協会WEBサイト「ニホンヤマネとは」
http://www.keep.or.jp/place_event/yamane/yamane.php

 

アニマルパスウエィ初号機(北杜市市道)

アニマルパスウエィ初号機(北杜市市道)

 

設置費用とコストの課題に挑戦

しかし、新たに設置すると2,000万円もの金額がかかってしまうため、その後は新たに設置されることはありませんでした。そこで、社会への普及・啓発を目的として、安価なアニマルパスウェイを開発しました。このアニマルパスウェイの設置費用は、200万円程度と安価で設置でき、メンテナンスフリーであることのメリットがあります。なんと1/10のコストで設置できるようになったのです。

アニマルパスウェイ1号機(北杜市市道)

アニマルパスウェイ1号機(北杜市市道)

第1号機は2007年に山梨県北杜市の市道に設置され、800回以上もの樹上性哺乳類の利用が確認されています。

第2号機は北杜市内に2010年に設置、第3号機は2011年に栃木県那須平成の森に設置、第4号機は名古屋市守山区志段味に2013年に順次設置されました。任意団体アニマルパスウェイ研究会は、現在一般社団法人アニマルパスウェイと野生生物の会として活動をしています。
※一般社団法人アニマルパスウェイと野生生物の会WEBサイト
http://www.animalpathway.com/

国際的な普及・啓発を目指して

今年の7月に第5回国際野生生物管理学術会議が開催されます。国内外の研究者により、道路生態学のRoad Ecology in AsiaとWildlife and Traffic(筆者はこちらに参加予定)の2つのシンポジウムとワークショップが開催されます。アニマルパスウェイを国際的に普及・啓発するよい機会だととらえ、乗り込んでいこうと意気込んでいます。
※第5回国際野生生物管理学術会議公式WEBサイト
http://www.iwmc2015.org/

 



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