ちいかんコラム

2016
07.25

ザリガニと、ザリガニと、ザリガニの話
北海道のザリガニ事情 vol.3 アメリカザリガニ

北海道支社 自然環境研究室 熊沢純一

北海道支社 自然環境研究室
熊沢純一

またまた登場しました熊沢です。

全3話の最終回ということで、満を持してあのザリガニの登場となります。( → 初回はこちら 前回はこちら )

北海道第3のザリガニ、皆様ご存知のアメリカザリガニです。

日本におけるアメリカザリガニの分布は広く、北海道から沖縄県まで分布していて、都市近郊の平野部等では最も身近な水辺の生き物の一つと言えてしまうほどに定着しています。
このアメリカザリガニの、北海道での外来種としての立ち位置は、前回のウチダザリガニとは少々異なります。

寒さに弱い・・・。

アメリカザリガニ

アメリカザリガニ

本州では圧倒的な猛威を振るうアメリカザリガニも、北海道の厳しい冬に阻まれて、思うように陣地を増やすことができません。

そこで、アメリカザリガニの取った戦略なのですが、彼らは市街地の温排水、あるいは温泉施設からの排水といった、冬季でも暖かな水温が得られる人工的な水域に入り込み、しっかりと暮らしています。

冷水の水質が良好な環境を好むニホンザリガニとは生活圏が直接重複することはなさそうですが、平野部に生息する在来の水生生物にとって、脅威であることには変わりません。

場所によっては、熱帯魚であるグッピーやティラピアと一緒にアメリカザリガニが生活している場所もあります。
温泉生態系、温排水生態系と言いますか・・・偶発的な条件によって生じた、奇妙な空間です。

そう書きますと、いかにもアメリカザリガニがしたたか者のようですが、結論としては人間に放棄されたアメリカザリガニ達の一部が、たまたま幸運にも温かな排水に巡り合い、必死に生き延びた結果というだけのことです。頑張り過ぎです。

 

ご存知の方も多いかと思いますが、国内に分布するアメリカザリガニは、ウシガエルの餌として持ち込まれた個体が増えたものです。
人間の都合ですまん、すまん、と思いつつも、あの繁殖力と圧倒的な個体数密度を目の当たりにしてしまうと・・・環境に対する圧力、影響というものを実感せざるを得ません。

ame3

 

ホームセンターのペットコーナーで売られていたり、学校の教材に使われたりと、寒冷な北海道でもアメリカザリガニに接する機会は少なくはないかと思います。
その際にも、手にする前に1回立ち止まって、この生き物にはどういった存在なのか、もし逃げ出した場合にはどんな影響が生じるのか、ちゃんと飼育するのにはどんな機材が必要なのか・・・・等々、考える機会を持っていただければ、と思います。

 

以上なのですが・・・
いかがですか。
何だかモヤモヤしますか?

アメリカザリガニ皆さんの中にも小学生のハナ垂れ小僧の頃、学校が終わると自転車で川に駆けつけ、友達とアメリカザリガニを捕まえた美しい思い出をお持ちの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
私もあります。
しかし、その美しい思い出さえも、上記のように、ほんの少し視野を変えるだけで、景色がガラッと変わってしまいます。

うーん、できればもう少し、皆さんに手放しで喜んでもらえるような内容にしたかったのですが、北海道、ザリガニのキーワードを絡めると、どうしても外来種の問題を避けて通ることはできません。

本当は、ザリガニを含め、甲殻類というのは非常に興味深い、単純に魅力的な連中ですので、また機会がありましたら、今度は皆さんに楽しんでいただけるようなお話をしたいと思います。

それでは、駄文、長文、ここまでお付き合いありがとうございました。



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